MY FIRST STORYの楽曲『ハイエナ』
バラード調に煌めくエモーショナルな心痛が感じられる一曲。
こちらについて歌詞を解釈していきます。
楽曲について
2020年8月12日にリリースされた6thアルバム『V』の収録曲。
脅威の再生回数を博しているYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にも満を持して登場。
そこで初披露されたのが、同曲でした。
FIRST TAKEでは、原曲よりテンポを落とすことで、歌詞の1つ1つをより鮮明としていました。
ハイトーンボイスで謳い上げる【僕は弱いね】というリフレインは、胸を突き上げられるような感覚。
感情こもった先に映るサウンドスケープはこれからのマイファスを感じさせられました。
未視聴の方は是非!
歌詞を解釈
ここからは、MY FIRST STORY『ハイエナ』について歌詞を解釈していきます。
※個人の主観に基づく解釈であることをご理解の上、お読み頂けると幸いです。
楽曲タイトル『ハイエナ』とは?
ハイエナには以下のような意味合いがあります。
- 歯やあごが頑丈で、死肉を貪る哺乳類「ハイエナ」
- お金や権力に対して貪欲な人々を比喩する言葉
歌詞中にもあるように、「愛」や「幸せ」に飢えている自身の状況を比喩していると考えられます。
これを頭の隅に置きながら、以下の解釈をご覧ください!
【1番】Hiroの求めた「愛」
ひび割れた幸せな時を過ごすほど
I'm sick of it飢えている哀しいハイエナみたいだ
噛み付いて邪魔をしてエゴを押し付けているだけ
嫌々...悪いのは誰だ?
『ハイエナ』/作詞:Hiro 作曲:Sho
まず始めに注目したいフレーズは『ひび割れた幸せな時』。
滲む多幸感に気付いていながらも、どこか空白を感じてしまう日々なのでしょう。
自分の中の埋まらない溝を必死に満たそうとしている姿。
そして、『邪魔をして/押し付けているだけ』というフレーズにも注目です。
自分を客観的に捉えることで、想起される膨大な自己嫌悪。
そこにあるのは、自身でも止められない他者へ対しての攻撃なのです。
欠乏感や失墜感から生み出される負のエネルギーは絶大。
足掻いて泣いて抱いて血に塗れ
変わらないのなんで?自分一人?
幸せになれない?叶わない?だから逃げ出すの?
愛そうともせず 愛をまた欲しがるだけでしょう?
『ハイエナ』/作詞:Hiro 作曲:Sho
ポイント
本楽曲のテーマは『愛(されたい)』
同アルバム収録曲『アンダーグラウンド』とも通ずる部分があるように感じられます。
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それは利己的で身勝手な一面もはらんでいるのです。
しかしながら、Hiroはそうせざるを得なかったし自分が壊れないように吠え続けてきた。
この楽曲は、壮絶な過去から作り上げられた孤独な自分へのラブソングなのです。
家族のこと、兄弟のこと、自分の活動のこと。
MY FIRST STORYとしてのHiroではなく、心の中にいる森内 寛樹の思いが綴られているのではないでしょうか。
全て疑問形で自問自答しているフレーズも特徴的です。
不安が押し寄せてくる夜にただひとりで抱え込んでいる情景が痛ましくも伝わってきます。
僕は弱いね弱いね弱くて意地っ張りだね
一人じゃ何にも出来ないのに
全て知った様な口ぶりで近寄る愛を遠ざけていた
こんな僕でも強くなるから
聴いて
『ハイエナ』/作詞:Hiro 作曲:Sho
これまでのMY FIRST STORYで掲げられてきたメッセージとは大きく異なっている今回の楽曲。
それは、当楽曲だけではなくアルバム【V】に対していえることです。
今までの楽曲は「なんで救われないんだよ」「絶対に超えてやる」
そんな風に、自分自身を振りかざして力のままに内なる感情を爆発させてきたイメージ。
しかしながら、数々のインタビューでも述べられていたように、
Hiroの「自立した姿」が映し出されている今回の楽曲。
落ち着きを持って、今一度自分を綴っている歌詞には心痛極まりない。
目の前にある「愛」を受け入れること。
それはHiroにとって何よりも難しいことであったのです。
今まで拒んできた自分がいなくなってしまった時に、
自分は何者になってしまうのだろうという漠然とした不安があるのだと感じます。
【2番~ラスサビ】正直になって見えたもう一人の自分
すれ違う幸せそうな顔見る度に
I'm sick of it真っ黒な心に染まり始める
見下して叫んでも誰も振り向かないまま
嫌々...痛いのは何処だ?
『ハイエナ』/作詞:Hiro 作曲:Sho
他者比較を繰り返し、他人の幸せの尺度で自身の幸福度を測ろうとするのです。
自分だけが別世界に取り残されたような感覚。
他者を蔑んで下に見ることで、束の間ではありますが相対的に自分の存在意義や承認欲求を満たすことが出来ます。
この歌詞では、他人を強く意識している心情が謳い上げられています。
世間の共通認識にある「当たり前」とされているもの。
それはHiroが最も求めているものであり、これまでに感じてこれなかったものばかりなのでしょう。
物理的な痛みならば、いずれ強くなった時に身体的に耐えられなくなってしまいます。
しかし心痛は、その痛みをはっきりと感覚として知覚できないが故に、止まらない自己否定が生まれていくのです。
途絶えて裂けて擦れて枯れ果てて
変われないの?せめて自分一人
幸せの中で立ち尽くし 孤独演じてる
理解ろうともせず人の所為にしてるだけでしょう?
『ハイエナ』/作詞:Hiro 作曲:Sho
幸せであることに気付かないようにすることは「生きやすい」状態でもあります。
常に責任の所在を曖昧にし、自分は不幸だから仕方ないというねじ曲がった受容。
傍から見れば、汚い生き方であるかもしれませんがそうしている方が楽だったりしますよね。
まさにHiroの心情も上記に合致しているものではないでしょうか。
更にプラスされているのは、ここまでひとりを貫いてきた故に想起したプライド。
また、「せめて自分一人」という歌詞も注目しておくべきポイントです。
楽曲『アンダーグラウンド』内にある「自分至上主義」通りの利己的思考。
「幸せになる」ことさえも「ひとり」を求めているのです。
今まで「僕は一人だ」と思い続けて
ずっと生きてきたけど
今なら「君と二人だ」と思い始めて
歩き出せる
この想いが君に届くのなら
僕は弱いね 弱いね 弱くて意地っ張りだね
一人で生きるのはもう無理だ
『ハイエナ』/作詞:Hiro 作曲:Sho
ラスサビ前の終盤、ここで募りに募った想いが吐露されています。
これまでの自分は虚像に過ぎず、本当はがらんどうで弱すぎる人間だということ。
「君と二人だ」というもう一人の登場人物を想起させるようなフレーズも登場しています。
しかし、ここで述べられている「君」とは、「正直になった自分自身」のことではないでしょうか。
新しい思考や変わった視点を取り入れたことで、また生きていく事ことが出来るといっているのです。
本当の弱い自分を閉め出して、作り切った自分で生きていく事に限界を感じていたHiro。
僕は弱いね弱いね弱くて見栄っ張りだね
一人じゃ何にも出来ないから
「君とずっと一緒にいたい」と
心から今そう思うから
こんな僕でも傍にいさせてずっと
こんな僕でも強くなるから聴いて
『ハイエナ』/作詞:Hiro 作曲:Sho
マイファスにここまで自分の弱さを見せた歌詞があったでしょうか。
そう感じてしまうほどに、自分を受け入れて「自立」していく姿が映し出されています。
あの負のパワーで突き動かされていたようなマイファスが見れないかもしれない。
そう思うと、呪いのような過去の記憶から解放されていくことに対する嬉しさと大人になっていく後ろ姿に寂しさを覚えます。
そうは言えど、これからの新しいMY FIRST STORYを十二分に体感できる楽曲・アルバムでした。
素晴らしい楽曲をありがとうございました…!
終わりに
いかがでしたでしょうか。
MY FIRST STORY『ハイエナ』について歌詞を解釈していきました!
最近は、YouTubeにバラエティにとマイファス(Hiro)の姿を見る機会が増えてきました。
本来は、東京ドームに向けて大きな布石を打つはずだった2020年。
例え、2021年に叶わなくとも、いつまでもあのステージに立つ日を心待ちにしています。